1.もういちど読む山川日本史

もういちど読む山川日本史

もういちど読む山川日本史


教科書と比べて恐らく違いが様々あるんだろうけれど、一目で分かる相違点は、重要語句がゴシック体で書かれていないこと。つまり、受験勉強のように一つ一つの語句を覚えるんじゃなくて、読み物として通読していくことで歴史の流れを俯瞰的に観察する読み方をしたほうがいい。点じゃなくて線で読む。ということに100ページほど進んだ辺りで気づいた。いや、最初はわざわざ赤マジック持って重要そうなところに線を引きながら読んだんだけど、これがつまらなくて途中で読むの止めて半年近く放置していたんです。で、今日気まぐれに再び手に取ってみて、上記のように読み方を変えてみたらなかなか楽しく読み進められて二時間強で読了。実際、歴史の流れを辿るという意識を持ちながら読んでいくことで、その後の行く末を決定づけるポイントやそれまでの歴史から鑑みると実に革新的な出来事っていうのを発見することができた。応仁の乱とか、関ヶ原の合戦とか、明治維新とか、そういう分かりやすい出来事だけじゃなくて、用語としては知っていたけどその影響力に関しては気づいていなかった事柄がいろいろ。
 それらを自分なりにまとめてみる。前置きをしておくと、本書を読んだ直後の自分は日本の歴史をこうまとめました、という、この時点での落とし前をつけるための作業であって、間違っているかもしれないし、間違いを恐れてはいけないし、間違っていたら後で考えを改めればいいだけのこと。という言い訳をはじめにしておく。
 まず、墾田永年私財法が大きかった。自らが開墾した土地は永久に私有することを認めたため、貴族や寺社が豪族と手を結んで開墾を進めて私有地を広め、荘園が生まれる。荘園を守ることで各地の武士団が成長し、それがやがて武士が政権を取る時代へと変化していき、鎌倉時代へ突入していく。
 戦国時代までは、常に荘園を守っている者の力が強い時代だったんですね。鎌倉時代荘園領主を差し置いて地頭が力を持つようになり、室町時代は幕府が地方武士を組織するために守護の権限を強化した結果守護大名が生まれて幕府を脅かす存在になる。その後応仁の乱がきっかけで下剋上の時代が訪れると、守護大名が実力で領地を争う戦国時代へと突入。ここで混乱が臨界点に突入し、秀吉が天下統一を果たす。
 そこで秀吉が行った検地と刀狩というのが、実はとても大切なものだった、らしい。全国の耕地の面積を調べ、一つの土地に一人の耕作者を充てることで、全国の土地を秀吉が支配し、土地(荘園)の争いというものを生じなくさせた。また、刀狩を行うことで、農民が武士になることはなくなった。こうして争いの種を積んでおくことで、政権が揺らぐ可能性が少なくなっていく。関ヶ原で西軍が勝っても、その後江戸時代のように安定した政権を維持できたんじゃないかな、と思う。
 そして江戸時代に入ると、武家諸法度を定めて大名への統制を厳しくした。こうして大名が反乱を起こすこともなくなり、黒船が来航するまでは安定した体制を取ることができていた。この辺りは、それまでの歴史を振り返り、ちゃんと考えて対策を打ったということなのだろうか。
 点としてではなく線として歴史を見て行くことで、新たな見地を得ることができた。狭い国土だし他国からの侵略がなかったから気づかなかったけれど、日本も戦国時代までは土地の争いというのを繰り広げていたことを知る。人間と土地の関係というのははやり重要なんだね。だからこそ、検地をおこなって土地の所有者を明確にさせ、刀狩で反乱の芽を摘んだのは大きな功績だったのかもしれない。